短期留学
私が入ったこの学校はいわゆる4年制大学に匹敵する美術専門学校で、各地から沢山の生徒が学びに来ていました。留学生もちらほら見かける程度にいましたが、日本人はほとんどいませんでした。
当時この学校には皆から恐れられている女性の鬼インストラクターがいて、まさにその出で立ちは『鬼』という感じでした。というのも、そのインストラクターは女性にして高身長で、180cmは超えていて、金髪に黒めがね、言いたい事は言うという精神でビシバシ生徒の心を裂いていました。
私が専攻していたグラフィックデザイン科は不運な事にそのインストラクターのプロフェッショナル分野で、その鬼を避けては通れないクラスがいくつもありました。
やめてしまう生徒も続出する中で私は意地でもAを取ろうと立ち向かう様子はまさに日本から流れ着いた桃太郎でした(笑)
そんな鬼を恐れてかクラスは静まり返り、課題をやってこなかった生徒は地獄でした。ある日インストラクターに呼び出され、怒られるのかと身構えていると「グッジョブ」と言われました。目がテンになった私に彼女は「英語が分かるのに課題をやってこない生徒もいれば英語を勉強しながら課題をすべてこなしてくる生徒もいるなんて笑えるわ」と言いました。
私はその時何となく彼女の気持ちがわかった様な気がしました。自分が彼女の立場でも課題をやってこないネイティブスピーカー達にガッカリするはずです。ファイナルの作品を気に入ったらしくホールに飾ると言われたときは、まさに地道に課題をこなしてきた努力が実になった瞬間でした。